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蒼舞日記

主に、オフライン活動お知らせとネタバレ雄たけび用です。

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原稿は今半分

おおおおお終われ・・・!!
更新があまりにないので、出だし(初稿なので修正あるかと思われます)がアップしてみました。
続きより興味がありましたらご覧くださいませー。

【危険物は持ち込まないでください。】サンプル。(修正される場合があります)


 その日。伊達政宗は、いつも以上に熟睡していた。本当に気持ち良く眠っていた。久し振りの熟睡だった。明日が日曜日で学校もないという一番ウキウキな土曜日の夜である。消灯時間など気にもせずに、ずいぶん遅くまで隣室の徳川家康の部屋で皆とワイワイやってきたから余計によく眠っていた。そんな幸せな時間が突如破られたのは、政宗にとってまさに青天の霹靂であった。

「たのもう!」

 時代がかった呼び声に、文字通り政宗は飛び起きた。最初は、夢を見ていてびっくりして目覚めたのかと思った。だが、声は再び聴こえてきて現実のことと理解した。政宗は声が聴こえる窓に目を向けて、驚愕のあまり眠気がすっ飛んだ。そんな馬鹿な。と、叫べたらどんなによかっただろう。だが、できなかった。騒げば隣室の連中の安眠を妨害することになる。
 事件というものは、突然やってくるものだと何かの小説で読んだ。と、彼は早くも現実逃避っぽいことをぼんやりと考えた。そんなこと、こんな若いうちから知りたいなんて思ったことなど一度もなかった。誓って言うが一度も。しかし、それはあくまで政宗の希望であって現実にそれが遥か遠い未来に起きる確約などがあるわけではなかった。現実に、今現在進行形で起こっている。信じたくないと彼は思った。夢じゃねぇの。なんてことはさっきからずっと考えている。頬を抓ってみたけど、痛いだけ。しっかりと目覚めているのは間違いない。だがこの耳に届くあの音は普通ではなかった。だって、時間がおかしい。時計が示すのは、午前三時。早朝というより政宗の感覚では夜中である。いやそんなことよりも、遥かに問題なことが目の前で起こっていた。
「たのもう!」
 また、聴こえた。政宗は、布団を頭から被って空耳だと信じ込もうとした。どうしたっておかしい。窓の外から声が聴こえることがおかしかった。政宗の部屋は三階のバルコニーなどというものが付いているはずもない男子校の学生寮だ。窓に誰かはり付いていることが一番の異常事態だ。人間か、人間なのか。人間でなかったら、それこそもっと問題だが、人間であっても問題だった。泥棒なのだろうか。いやいやいやいや、泥棒ならたのもうなどとわざわざ声をかけるわけないし、男子高生の寮に忍びこむ泥棒なんぞいるわけない。いるとすればそれはただの変態だ。
(変態?)
 ちょっと待て。変態は最悪だ。政宗は、窓の鍵はしっかりと締めてあることを思い出しながら、布団の中により深く潜り込んだ。どうしよう。侵入された場合のことを考えねばならない。武器になりそうなものは、この部屋にあっただろうか。すぐに思い出したのは、政宗に武道を続けさせようとして入寮時に無理やり実家の隣人であり政宗の日本での保護者でもある片倉小十郎に持たされた竹刀と木刀だった。あれはどこに置いただろうか。確かクロゼットの奥に封印した記憶がある。俺は高校三年間を自由気ままに生きると決めたあの日からずっとそこに眠っているはずだ。そこまで取りに走るには、数秒かかる。もし、その間に奴が、侵入を果たした場合。身を守るためには…。
「伊達政宗殿! 開けてくだされ!」
(俺限定だと?)
 政宗は、叫びたかった。もう安眠妨害とか言っている場合ではない。危険すぎる。残念ながら、彼のプライドがそれを許さなかった。何故、変態は俺の名前を知っているのだ。すでに勝手に窓の外の男を変態と断定してしまいながら、政宗は恐怖に慄いた。普通の喧嘩ならいい。だが、変態相手はちょっと嫌だ。なんというか生理的に嬉しくない。
「ぬぉぉぉぉぉぉ、指が痺れるでござる!」
 ガリガリという音が聴こえてきて、政宗は眉をひそめた。変態は、どうやらしがみついているのが限界らしい。このまま放置を決め込めば、勝手に落下するのではないか。政宗はにんまりした。このままギリギリまで知らぬ存ぜぬを通して、落下と同時に窓を開けてやろう。そうして落下する変態をせせら笑ってやる。そう決めると、少しだけ気持ちが落ち着いてきた。
(しかし、声が若いな)
 政宗とそう年齢が変わらないような感じである。と、いうことは同じく高校生である。そんな若さから変態行動に走るとは不憫な男だ。まぁ、ここは男子校だったのでそういう奴らがいることも知っている。誰それが付き合っているとかいう話はよくきく。政宗にとってはかなりどうでもいい話だったので噂話に花を咲かす連中の中に混ざったことがないので、自分が話題に上がっていたかどうかは知らない。と、いうか。知りたくない。絶対に。
「まさか、な」
 見知った顔ではないよな。だったら落とすのも酷いか。布団を政宗は少しだけ持ち上げた。窓の外にはカーテン越しに蠢く影がある。そのシルエットに見覚えは…なかった。
「伊達殿! 後生でござるから、窓をお開けください。それがし、決して怪しいものではござらぬ。ただ、玄関が開いておらなかった故、同室になる貴殿に助力を願いたいだけでござる! ふぬぅぅぅぅぅ、ま。負けぬでござるよ、この真田幸村この程度の試練には負けぬぅぅぅぅ!」
 影がガシッ。と、窓枠に張り付いた。男は、必死なようだ。それはそうだろう。三階から落ちたらただではすまない。
「……Room mateだと?」
 布団をバサリ。と、跳ね上げて政宗はベッドから身を起こした。今、聞き捨てならない言葉が混ざっていなかったか。不審そうに眉を寄せて、一昨日の寮監の話を思い出した。
「そういや、転校生が来るって言っていたな」
 でも、こいつは違うだろう。いやでも、今。同室になるとかほざいたな。政宗は、一応確認するべきだと思い始めていた。だが、不用意に窓を開けるわけにはいかない。ゆっくりと、相手に悟られぬようにベッドから降り、狭い部屋を横切って、クロゼットをそっと開けた。そこには、仁義と掘られた木刀がおさめられているはずだ。それを探り当て、引っ張り出して握りしめた。
(怪しかったら、殴り倒す)
 正当防衛だ。覚悟を決めて政宗はゆっくりと窓へ近づいて行った。そして、窓横の壁に背中をつけて、カーテンを勢いよく引いた。


「………」


 そこには、必死の形相で窓にはりつく、真新しい制服に身を包み、背中に大きな風呂敷包みを背負った人畜無害そうな若者がいた。
ああ、転校生か。と、納得していいものか政宗は迷った。例え納得したとしても、どうしたらいいのか。このまま、カーテンを黙って閉めてもいいだろうか。
「だ、伊達政宗殿ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
 政宗の姿を見るなり、男は安心したとばかりにダァァァァと、涙を流した。鼻水まで出ている。別に悪いことなどしていないのに、なんだか後ろめたい気分になる。政宗は、顔が引き攣っているのを感じながら、思わず一歩下がった。それから、額に手を当てた。自分はなにも悪くない。なんというか、とても頭が痛かった。

「…わかったから、泣くな」

 他に何が言えただろうか、言えるわけない。

 


こんな感じの出だしです。
明らかな笑いですが、途中から普通に甘い話になってます。
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